生活情報紙「あれんじ」公式サイト

(2)若手3人、本場で修業 震災後は 出張公演も

清和文楽館

(2)若手3人、本場で修業 震災後は 出張公演も

2017年8月19日
|

年間200回の公演が行われる人形浄瑠璃専用の舞台。右手が太夫や三味線が陣取る「出語り床」=清和文楽館

清和文楽の歴史について調べようと「清和文楽館」を訪ねました。ここは、資料館と人形浄瑠璃専用舞台からなり、専用舞台は九州で唯一です。 同館の若手3人は人形浄瑠璃の本場・淡路人形座(兵庫県淡路島)で修業するなど次世代を担う人材として努力を重ねています。

人形遣いの山下真衛さんと太夫・三味線の渡辺奈津子さん、そして取材の日はあいにくお休みだった太夫・三味線の岡本翔さん(21)と3人で舞台を盛り上げます=清和文楽館

3人が帰郷した昨年4月9、10の両日には、その成果を舞台で披露しました。

しかし、直後に熊本地震が発生。同館や周辺には被害こそありませんでしたが、予約のキャンセルが相次ぎ、定期公演に観客が一人もいないという状態になったといいます。

淡路島での研修で、太夫(たゆう、浄瑠璃語り)と三味線を学んだという渡辺奈津子さん(28)は、「被災地の方々の胸中を思うと、同館の状態を悔やむわけにはいきません。お客さんが清和まで来るのが大変なら、こちらから出向こうと考え直しました」。

福岡、宮崎、大分へと出張公演を重ね、好評を博したそうです。

渡辺さんは、地元・清和の生まれ、専門学校で菓子づくりを学び、前職はパティシエでした。

「パティシエは子どものころからの夢でした。次の挑戦をしたくなって、清和文楽の世界に飛び込みました」

三味線の経験もなく、音を覚えるのも大変。まさに一からのスタートだったといいます。

「師匠の音を録音して勉強しました。今も大切に聞いています。生涯修業です」と、芸の道にまい進しています。

人形遣いとして派遣されたのが山下真衛さん(26)です。矢部出身の山下さんは、高校時代を熊本市内で過ごし、卒業後はフリーターを経験し、Uターンしました。

人形遣いの修業は、足遣い8年、左遣い8年、主遣い(おもづかい)は一生といわれています。

山下さんは、「研修期間はたったの2年。それまでに、人らしく動かせるように、四六時中人形にふれていました」と淡々と話しますが、かなり濃密で大変な鍛錬があったと察します。

1体の人形を3人で動かす人形遣いは、息を合わせるタイミングが難しそうです。

「主遣いが小さく合図を出すのですが、その人それぞれに出し方が違うんです。こういうときに重要なのがコミュニケーション。息の合わせ方は技術のみならず、信頼関係が大切です」と山下さん。

「清和文楽館」でも人気が高い演目「傾城阿波の鳴門」(けいせいあわのなると)の主人公・お弓と黒頭巾姿の山下さん=清和文楽館

清和文楽の舞台は、農家の方々で結成される「清和文楽人形芝居保存会」の9人とともに演じます。

「上演が終わるとドッと疲れます(笑)。頭巾の下は汗だくです」と山下さん。

震災から一年以上が経ち、平常を取り戻した「清和文楽館」。「私たちと同世代の方にも見に来てほしいですね。文楽は難しいと思われるようですが、日常の話をモチーフにしてあるので、映画のように楽しんでもらえれば」と渡辺さん。

地元の小学校に清和文楽や人形の使い方などを教えに行くという山下さんは「子どもたちにも興味を持ってほしい。清和文楽は地元の人たちで担っていくものですから」と目を輝かせます。

定期公演は毎週日曜日(7~11月)に開催。観賞料/1800円、中学生以下1200円。公演がない日は、文楽の資料や映像を楽しむ「資料棟」(写真奥)へ。見学料/500円、中学生以下300円

清和文楽館