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(1)七夕綱に思いを込めて 星と交信する木々子(きぎす)の里

家を守るという意味合いを持つヤモリや、卵、鶴、亀、わらじなどいろいろ

(1)七夕綱に思いを込めて 星と交信する木々子(きぎす)の里

2017年6月3日
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初夏の球磨川と新緑の美しさに心が洗われるようです

母なる川、球磨川は、この日も山々の緑を映し、ひすい色の水をたたえていました。球磨川の清流に沿って走るJR肥薩線は「川線」と呼ばれ、鉄道ファンを魅了しています。

川沿いを走るJR肥薩線。白とブルーの小さな列車がかわいい

球磨川と肥薩線に並行するように走る国道219号を坂本町中谷で東に折れ、球磨川に架かる赤茶色の中谷橋を渡ると、一気に山深い風景に。さらに東に向かって車を走らせると、球磨川の支流・中谷川沿いは、すり鉢状の低地になっていて、川口、馬廻(まめぐり)、小崎と、小さな集落が次々と現れます。軒先に干された洗濯物や整えられた段々畑。そこには、穏やかな人々の暮らしが息づいていることを感じます。

小崎地区には、1849 (嘉永2)年に作られた石造りの小崎眼鏡橋(八代市指定有形文化財)が、今も当時のままの姿を残しています。この橋はかつて山深き五木から八代方面へ抜けるための大切な道でした。

嘉永2年に作られた小崎眼鏡橋。昭和38年の大水害でびくともしなかったと伝わります

フジの花。山里では、下界よりも少し遅れて花を付けていました

さらに中谷川をさかのぼり、衣領(えり)地区を過ぎると、最奥の地、木々子(きぎす)地区に到着します。

木々子地区。現在22戸の小さな集落です

木々子は、現在22戸の人たちが暮らす静かな集落です。家々を見下ろす小高い丘には守り神である“堂さん(木々子堂)”があり、何やらにぎやかな笑い声が聞こえてきました。

おそろいの帽子をかぶった地区の女性たちが、わら細工の飾り物作りに忙しそうです。

木々子の小さなお堂に集落の人たちが集まり、みんなでおしゃべりしながら飾り物を作ります

手ぬぐいで作ったおそろいの帽子は、仲良しの証です

“堂さん”の柱にかけて張られた長い綱にそれらをつり下げていました。前年に刈り取り、干しておいた稲わらを、100回以上“ウチデンコヅチ(打ち出の小づち)”でたたいて、軟らかくした後、足と手を器用に使い、飾り物を次々と編んでいきます。

“ウチデンコヅチ”でたたいてわらを軟らかくすると、細工がしやすくなります

飾り物の種類も、いろいろ。タコやわらじ、鶴に亀、卵、織り姫、ひこ星、そしてヤモリなど実にユニークです。

これは、地域に古くから伝わる「七夕綱(たなばたづな)」。「綱張り」の形態をとる七夕行事の準備をしているのです。月遅れの七夕(8月6日)から約1カ月間、長さ40メートルの綱が、中谷川をまたぐように架けられます。七夕綱には、悪霊をはらう結界としての意味や、織り姫とひこ星が綱を伝って出会えるように、また、七夕綱を伝ってお盆に先祖の霊を迎える意味合いなど、たくさんの願いが込められています。

家を守るという意味合いを持つヤモリや、卵、鶴、亀、わらじなどいろいろ。かつては牛用のわらじも作っていました(資料写真)

織り姫とひこ星は、船に乗っています

毎年、「七夕綱」の飾り付けの季節になると、静かな集落も見物客が集まりワイワイとにぎわいを見せます。

毎年、40メートルもある七夕綱を中谷川にかけます。五穀豊穣や子孫繁栄などの願いも込められています(資料写真)