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(2)夫婦愛の深さに心打たれて 家族の絆につながれた物語

若宮海水浴場

(2)夫婦愛の深さに心打たれて 家族の絆につながれた物語

2017年4月1日
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高台の牛舎に春風が渡っていきます

戸馳島の南側の頂きに「吉田牧場」があります。訪ねてびっくり。ここから、息をのむほどの素晴らしい海の景色が広がっているのです。

人もうらやむこの絶景を独占しているのが、約700頭の黒毛和牛たち。そんな牧場の立地は、まさに高級リゾートホテル並みです。

戸馳島の南側の高台にある吉田牧場から眺める不知火海

放牧された牛たちは不知火海の絶景をいつも眺めているのです

潮風と太陽をたっぷりと浴び、30カ月以上にわたりゆっくりと肥育される「吉田牧場」の黒毛和牛は、「潮風」というブランドで高級和牛肉として、主に関西方面に出荷されています。

牧場を経営するのは、吉田照光さん(65)と長男の光一郎さん(39)、次男の博則さん(36)です。

吉田牧場のみなさん。左から吉田博則さん、照光さん、光一郎さん

そしてもう一人。一家の太陽だった、故・明美さん(享年・63)の存在をご紹介しなければ「吉田牧場」の物語は成り立ちません。

昨夏、不慮の事故で天国に旅立ってしまった明美さんは、照光さんの“自慢の女房”でした。「パワフルで前向き、賢明で誰からも愛される女性」だったそうです。

「女房は私の自慢でした」と亡き明美さんのことを語る吉田照光さん

一昨年の年末の台所でブリをさばいている明美さんの明るい姿(吉田家提供)

今から45年前。果樹園を営んでいた照光さんは、この丘の日当たりの良さを考慮して、黒毛和牛を肥育することを決心しました。山を開墾し、手作りで牧場を築いてきたのです。その良きパートナーが明美さんでした。

「くじけそうになるとき、いつも女房が隣にいて、励ましてくれたんです。昔の話ばってん、台風が来た翌日に牧場に来てみると牛舎がなかったことがあってね。私が首をうなだれていると、女房が『大丈夫! 大丈夫!』と背中を叩いてくれてね。あがん女性にはもう二度と巡り会えん。あの人は私の宝物だったとです...」

あふれる涙を拭う照光さんの隣で、ぐっと胸がつまります。

すがすがしい景色を抱く牧場にたたずみながら、ここにある明美さんの生きた証と、家族の深い絆を思うのでした。

「ここにはいつも気兼ねなく来れる」と吉田牧場に顔を出した、博則さんたちの幼なじみの平原将克さん(34)。島で運送業を営んでいます

美しい海が見渡せる若宮海水浴場

戸馳神社に立つ仁王像。同じ部位をなでると痛みや病が治ると伝えられています