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(3)江戸時代から続くハゼ並木 ラーメン1本で勝負する店

ラーメン500円

(3)江戸時代から続くハゼ並木 ラーメン1本で勝負する店

2017年1月21日
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水俣の冬の風物詩、大根の寒干しの風景

島津のお殿様が参勤交代に通ったという旧薩摩街道沿いに、かつて「侍」と呼ばれた地区(同市月浦)があります。そこに立ち並ぶハゼの木は、今、粒状の実を枝いっぱいに蓄えています。ハゼの実ちぎりに精を出していたのが、「はぜのき館」館長の緒方新一郎さん(67)です。

「子どもんころから、ハゼの実ば拾って、小遣い銭(せん)稼ぎばしよりました。だけん、ハゼ負けなんかしとられんかったですたい」と笑います。

水俣でのハゼ栽培は、江戸時代に細川藩の経済政策として始められました。その使い道はいろいろ。和ろうそくや、力士の鬢(びん)付け油、それにコピー用のトナーなどにも使われているとは、驚きです。

「はぜのき館」の玄関には、大相撲の立行司、第26代式守伊之助が書いた直筆の看板もかけられており、相撲とのつながりの深さがうかがえます。

力強い筆文字が印象的な第26代式守伊之助が書いた直筆の看板

水俣のハゼは、“昭和福ハゼ”という種類。「とにかく質がよいので有名なんですよ」と「はぜのき館」館長の緒方新一郎さん

「ハゼの木の枝ば誰かが切ってしまわんごと、お侍さんが見張っていたことから、この地域は、侍と名付けられたという説があります」と緒方さん。畑には冬の風物詩、寒干しの大根がうららかな太陽の日ざしにさらされています。かつてこの山里で、お侍さんが闊歩(かっぽ)していたという姿は、ちょっと想像できませんね。

「はぜのき館」では、ろうそく作りの体験ができます

はぜのき館

 

しょうゆ豚骨味のラーメンはこくがありまろやか

はぜのき館から、街道を少し上ったところに、「ラーメンと大ラーメン」の2種類しかメニューがないラーメン屋があると聞き、訪ねてみました。その名も「侍茶屋」。

「ラーメン」と書かれた黄色いのぼりがはためいている以外は、一見すると普通の民家です。玄関からは、水俣市出身のシンガーソングライターの故・村下孝蔵さんの歌が流れていました。

民家を改装した「侍茶屋」は、ぼんやりしていると通り過ぎてしまいそう

店主の木下信司さん(66)は、村下さんと親交があったようです。「村下さんのお姉さんと一緒に体操ばしよったっですよ」と、当時の新聞を見せてくれました。なんと木下さんと村下孝蔵さんの姉・絹代さんは、50年ほど前に、県の高校総体でそれぞれ個人優勝したほどの実力派。新聞に掲載されていた倒立をする当時の木下さんの写真は、日本のエース、内村航平選手かと見まごうほどのかっこよさです。

くまモンのエプロンが似合う「侍茶屋」の木下信司さん

熊本市内で長年ラーメン店を営んでいた水俣市出身の木下さん。両親が住んでいた家を改装し、5年前にこの店をオープンしました。「昔はお茶屋があって、旅人でにぎわったそうです。いろんな人に立ち寄ってほしいという思いを店名に込めました」

店を一人で切り盛りする木下さんは厨房(ちゅうぼう)と、座敷を行ったり来たりと大忙し。それでも、村下孝蔵の歌声にのせて、足取り軽く、てきぱきとラーメンを運びます。

しょうゆ豚骨味のラーメンは、こくがありまろやか。木下さんのチャーミングな笑顔と、ラーメンの優しい味わいが染みていきます。

ラーメン500円。しょうゆ豚骨味です

侍茶屋