
大正5(1916)年から地産地消の酒造りを続ける「亀萬酒造」。今年創業100年の節目の年を迎えます
海の町、津奈木は後背を山々に囲まれ湧水も豊富。この清冽な水を生かして、天然醸造最南端の清酒造りを行っているのが「亀萬酒造」。熊本地震直後は、緊急支援として、日本酒の仕込み水を瓶詰めにして届けました。
「少しでも被害に遭われた方々の力になることができればという思いでした」と、次期4代目の竹田瑠典(りゅうすけ)さん(30)です。
5年前に取材した時は、花嫁募集中でしたが、平成26年に恵さん(31)と結婚し、昨年、長女・絢華ちゃんが誕生。竹田さんの母・陽子さん(60)も孫のかわいさにメロメロです。

左より、母の竹田陽子さん(60)、妻の恵さん(31)、長女の絢華ちゃん(1)、次期4代目の瑠典さん(30)


ふんわりと日本酒の香りが残る「酒ゼリー」1個100円。直売店でのみ販売されています
喜びに包まれる日々の中、なんと5月に開催された伊勢志摩サミットの安倍総理大臣夫人主催夕食会で亀萬の大吟醸「珍珠」がふるまわれました。
「被災地のお酒として、宮城県の『伯楽星』さんのお酒とともに選ばれました。昭恵さんのフェイスブックにも写真がアップされていて、記事を見て熊本のこと、津奈木町のことを全国の方に知ってほしいですね」と瑠典さん。
これまでも、地元でしか味わえない商品を開発する一方で、全国の地酒の店での取り扱いを進めてきた瑠典さんにとって、うれしい出来事になりました。


津奈木町限定の「純米吟醸 つなぎ」300ml540円。さっぱりとして冷やして飲むには最適な「夏純米 亀萬」720ml1234円

蔵の顔として作り続けてきた大吟醸「珍珠」720ml5400円。「地震の影響で消費が落ち込んでいる中、このような形で応援してもらってうれしいですね」と瑠典さん
まず町の人たちが利用し、楽しんでもらいたい
32年前から「緑と彫刻のあるまちづくり」を推進してきた津奈木町。だれでも見ることができるように橋の欄干など町内に16体の彫刻を設置。平成13年には「つなぎ美術館」も開館、「アートの町」の拠点になっています。
開館時から学芸員を務める楠本智郎さん(50)は、「まず町の人たちが利用し、楽しんでもらいたい」と話します。その一つが住民参画型のプロジェクト。全国で話題になった「赤崎水曜日郵便局」(今年3月終了)は、まだ記憶に新しいところ。
閉校になった海の上に立つ赤崎小学校を郵便局に見立て、全国から送られてくる水曜日の出来事を綴られた手紙をスタッフが無作為に交換して転送するというユニークな試みに注目が集まりました。
「開局中はさまざまなアーティストが訪れて町の人達と触れ合いました。それによって、郷土にあるもの、自分達の足下にあるものを見つめ直す機会になったと思います」
次のプロジェクトは、宿泊施設がない津奈木町に「ホテルを誕生させる」案に決まったとか。さてさてどんなホテルに、おもてなしになるのか、期待もぐんと高まります。

津奈木町が30年来取り組む“アートの町”の拠点となる「つなぎ美術館」

7月18日(祝)までは八代市在住の画家・澤村武山さんの絵画展「いつもの風景、流れるとき」を開催(観覧料300円、高校・大学生200円、小・中学生100円)

「つなぎ美術館」から車で10分ほどの場所に立つ「赤崎小学校跡」。現在は校舎の中には入れませんが、海に立つ小学校は写真に収めておきたい風景です

「つなぎ美術館」学芸員の楠本智郎さん(50)。今年1月には、「赤崎水曜日郵便局」の裏話や「水曜日の物語」を綴った手紙で構成した一冊「赤崎水曜日郵便局」も出版されました
各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。