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(2)小路を歩けば 心もあたたかく

雄大な富士の絵が金色に輝く座敷

(2)小路を歩けば 心もあたたかく

2016年1月16日
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「玄小路」入り口を示す石碑

「玄小路」の一角で、のんびり歩く猫に出合いました

山鹿には、豊前街道の左右に細い枝のように伸びる多くの路地があります。地元で「小路(しゅうじ)」と呼ばれる細道には、昔からそこに住む人々の暮らしが息づいています。

    

その一つが、「玄小路(げんしゅうじ)」です。古い門構えや黒塗りの板塀が続く清々しい小道を歩くと、土台石の間から芽吹いた草や野の花までもが凜と引き立って見えます。

ここに、熊本市内から数年前に移住してきたのが大渕(おおふち)鶴代さん(52)です。大渕さんは、戦前の古民家を生かした自宅で、月~水曜限定でパン店「ツルノパン」、週末はパン教室を開いています。

「つっかけ履いて気軽に来てほしい」という願い通り、今ではお客さんが「ただいま」と入ってくるサロンのような存在になりました。何より、大渕さん自身が欲しかった「訪れる人と楽しく飲んで食べておしゃべりできる」場所となっています。

営業日には入り口の門に、木製の看板が出されます=ツルノパン

ツルノパンの門の脇に自生していたミント。きれいな緑がグレーの石組みに映えます

「玄小路」の横合いの小道で、偶然に大渕さんのご近所さんの岡村サダ子さん(88)と出会いました。岡村さんは、大渕さんにとっては〝山鹿のお母さん”。

「引っ越してすぐに岡村さんが差し入れ片手に様子を見にきてくれて、どんなに心強かったことか」としみじみ。「縁もゆかりもない私をこころよく迎えてくれ、小さなことでも気配りしてくれるあたたかさに助けられています」と大渕さん。

おしゃべりを終えて遠ざかる岡村さんの後ろ姿を「気をつけてね」と見送るまなざしに、今も小路に残る人情を見るのでした。

朝の散歩中に出会ったご近所の岡村サダ子さんと話が弾む大渕鶴代さん

オーナーの娘さんが作るアクセサリーも販売。ブレスレットやイヤリングが800円前後~と手ごろ


ツルノパンの「塩クッキー」1袋210円、「ミルククッキー」1袋230円、「メープルクッキー」1袋300円

パンやクッキーは居間でイートイン可能。ハーブティーなどドリンクやセットメニューもあります=ツルノパン

カボチャとクリームチーズパン(1個170円)

人気のピリ辛キンピラゴボウパン(1個170円)

「玄小路」沿いでひときわ目を引いたのは、立派な塀と門構えのM家の屋敷(一般には非公開)。「八千代座」完成の前年に建築されたというお屋敷を訪ねてみました。

石塔がそびえる純和風の庭園や、広い廊下を備えた重厚な建物に趣を感じます。

M家の奥さんはとても気さくな方です。帰り際、「よそからもらうのを植えているので、名前も定かでないんだけど」という庭の草花を、「これもあれも持って行きなっせ!」と袋いっぱいに持たせてくれました。

思いがけないお土産に、持ち帰った草花がわが家の庭に根付いて咲く日が待ち遠しくなります。

「玄小路」に面した屋敷の庭園。池にかかる橋や石灯籠が風雅です

「玄小路」の板塀越しには春を待つ花の枝も見え、開花の時季にはその香りが小路に広がることでしょう

ふすまいっぱいに描かれた雄大な富士の絵が金色に輝く座敷

ふすまの裏面には、柄違いの松原が描かれていました。その向こうの庭には五重塔が見えます

ツルノパン