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(1)30年前に始めた入湯手形 今や全国の温泉地で導入

使用済みの入湯手形

(1)30年前に始めた入湯手形 今や全国の温泉地で導入

2015年12月5日
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温泉街には多くの広葉樹が色づき、木々の間からのぞく町の風景も印象的

ススキやカヤが黄金色に染まるミルクロードを抜けて一路・南小国町へ。今年の秋は暖かい日が続きましたが、山間に近づくにつれ、キンと空気が冷たくなってきます。山肌を埋め尽くす杉林。所々にまだ広葉樹の紅葉が残り、季節の移ろいを感じます。近づく冬の訪れを感じながら、黒川温泉へとやって来ました。

温泉が湧き出したと言われている場所に立つ「地蔵堂」

筑後川源流の田の原川沿いに立つ24軒の旅館が並ぶ小さな温泉町は、もともとはひなびた湯治場でした。脚光を浴びるきっかけとなったのが、30年前に始まった「入湯手形」です。 

「最初の年は6000枚作ったんですが、全然売れんかったね(笑)」

入湯手形の考案者の一人「ふもと旅館」社長の松崎郁洋さん(62)は当時を振り返ります。

紆余(うよ)曲折の末、1枚の手形で3カ所に入浴できるシステムに加え、ヒノキや洞窟、立湯、川湯に滝見風呂…と、各旅館それぞれに個性ある露天風呂の魅力が広まってくると多くの反響を呼ぶようになりました。全国初のこのシステムは、やがて“黒川方式”と呼ばれ、全国の温泉地でも導入されるようになりました。

杉の小径木(しょうけいぼく)を活用した入湯手形1枚1300円。旅館組合や各旅館で販売

「現在の黒川温泉は入湯手形なしでは語れません。売り上げは、広葉樹の植樹など温泉街の環境整備に当て、統一された街並みを造っていきました。すると、日帰りの方も宿泊の方も、温泉街をのんびり湯めぐりしながら歩いてもらえるようになりました」と松崎社長。

軒下に下がるトウキビ、薪小屋、年季の入った丸ポスト…。サワサワと流れる田の原川の瀬音に耳を傾けながら温泉街を歩けば、そこかしこで見つける懐かしい風景に気持ちが癒やされるのです。

旅館組合のある共同駐車場と温泉宿が連なる下川端通りをつなぐ「いご坂」

夕方になると浴衣で温泉街を歩く人もちらほら


ある日、おみくじ箱の中にネコが! 「ふもと旅館」の女将さんが撮ったほのぼの写真です

地蔵堂前にある共同浴場「地蔵湯」は、200円で入浴できます

「地蔵堂」の境内には使用済みの入湯手形が鈴なりに