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(1)昔ながらの伝統的な定置網 未明の海に格闘する男たち

ブリやヤズ(ハマチ)、ネリゴ(カンパチの若魚)、マンパ(ソウダガツオ)、タチウオ、トビウオ、カマスなど

(1)昔ながらの伝統的な定置網 未明の海に格闘する男たち

2015年11月21日
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朝方水揚げされたばかりのタチウオが、漁港の橋の下に干してありました。浜風を利用した、暮らしの知恵です

漁港の周りはトンビがいっぱい。宙を舞う姿は優雅で自由の象徴のようにも思えますが、間近で見る猛禽類は迫力があります

午前4時。まだ真っ暗の大江漁港。浜に吹く晩秋の風はひんやりとしています。山影の上に浮かぶ三日月の傍らに、金星がまばゆいばかりの輝きを放っています。

いつもなら眠りについている時刻に起き出し、海の香りに包まれると、幼い頃から見慣れている風景も違ったものに見えてくるから不思議です。

大江漁港は羊角湾の沿岸部にあります。静まりかえった漁港の一角に、ポツンと明かりが灯る小屋がありました。

「丸和漁業生産組合」の番屋(ばんや)です。

「もう寒なったもんねぇ」と言いながら、ドアを開けてくれたのは、同組合長の渕口文俊さん(67)。渕口さんは、毎日誰よりも早くここへ来て明かりを灯し、組合員を迎えます。

丸和漁業生産組合の皆さん。(左から)坪口新一郎さん(34)、渕口文俊さん(67)、横口紀明さん(72)、平山利徳さん(42)、丸木太二さん(45)、壱村靖さん(50)

仲間の漁師が次々と番屋に集まり始めました。30~70代の組合員9人のチームで船に乗るのです。

今回、見学させてもらったのは大型定置網漁。大敷網(おおしきあみ)漁とも呼ばれる伝統的な漁法で、全長500mの網を設置し、回遊魚の習性を生かして魚を捕獲するというものです。

水深30mの深さに設置された大型定置網の模型。潮の流れにのって近海までやってきた魚群が幅400mの道網(みちあみ)を伝って入網し、運動場(網の中)でしばらく回遊したのちに、狭い間口を通って捕獲用の箱網へと導かれる仕組みです

「ほんなら、そろそろ行こかい」。渕口さんのかけ声で「丸和丸」という船に乗り込みます。私たちも漁に同行させてもらいました。

港を出て10分ほどで漁場へ着くと、早速、漁が始まりました。ミシミシと網上げ機の音が響き始めると漁師たちはそれぞれに持ち場に着きます。あうんの呼吸で黙々と網をたぐり寄せ、魚を追い込みます。

網にかかった魚たちは玉網(たも)ですくい上げられ、次々とトロ箱へ。バシャバシャとはねる魚の姿や水しぶきがライトに照らされる様は圧巻です。

県内で唯一という大規模な定置網漁。大江漁港では、同組合の他にもうひとつ大型定置網漁を行う組合があり、漁港では一日にブリやヤズ(ハマチ)が2000本近く水揚げされることもあるといいます。

生きのいい状態で港へ持ち帰ろうと、慌ただしさを増す船上。朝の水揚げは本渡の市場へ、午後の水揚げは翌朝の熊本田崎市場へと直送されます

この日水揚げされたのは、ブリやヤズ(ハマチ)、ネリゴ(カンパチの若魚)、マンパ(ソウダガツオ)、タチウオ、トビウオ、カマスなど。「最後の網を上げるまで、何が入ってるか分からんでしょ。これが一番の楽しみ」と渕口さん

巻き上げ機でひっぱりながら、みんなで一斉にたぐり寄せていきます。息の合った作業っぷりに、ただただ驚きます

破れた網を繕ったり、網を洗ったりの作業も漁師の仕事。網に藻がつくと魚が寄って来なくなるので、小まめに手入れをするそうです

丸和漁業生産組合