
計石漁港と女島をつなぐ「芦北大橋」
潮風香る海辺の女島(めしま)地区。明るい日差しを浴びて稲などの作物がスクスクと育っています。その中に、熊本では珍しいサトウキビが育つ畑を見つけました。
精神障害者の作業所「ばらん家(ち)」(NPO法人、松原久美子理事長、68)が耕作放棄地を活用して、サトウキビを栽培しているのです。
海風が通り抜ける女島は、霜や雪の被害も少なく、サトウキビ栽培に適しているのだそうです。松原さんはそんな地の利を生かし、4年前からサトウキビの無農薬栽培をスタートさせました。年間約1万本を収穫し、自社工場で黒砂糖を製造しています。
松原さんは、かつて保健師として仕事をしていました。身体的・知的・精神的疾患などによる、“暮らしにくさ”を抱える人たちに自立のきっかけを作ろうと、2006(平成19)年に「ばらん家」を立ち上げました。
「人間はみんないろいろな個性を持っているでしょう? バラバラな個性を持つ人たちが、 “松原の家”に集まるから“ばらん家”なの。人とのコミュニケーションが苦手な彼らも、自然が相手の農業ならしっかり取り組んでくれるんです」

2mほどに伸びたサトウキビが、海風に揺れていました

サトウキビ畑の向こうに広がる穏やかな海
11月末になると、作業場は大忙し。収穫したばかりのサトウキビを圧搾機にかけ、あくを取り除いて、薪釜(まきがま)で煮詰め、冷やし固めるという昔ながらの製法で、黒砂糖を作ります。
そうしてできた黒砂糖は、美しい茶色をしています。小さな塊を口に含むと、たちまちホロホロと溶けていき、深いコクとやわらかな甘みの余韻がたまりません。
その深い味わいは、人にも作物にも無理をさせない、松原さんの強さとやさしさそのものにも思えます。
ばらん家の黒砂糖は、芦北町の農産物直売所「ファーマーズマーケットでこぽん」などでも販売されています。

「ばらん家」代表の松原久美子さん(前列右から2人目)と作業所の皆さん。カラッと明るい松原さんの周りには、いつも笑顔があふれます

ばらん家の黒砂糖は、明るい茶色をしています
NPO法人 ばらん家
- 葦北郡芦北町佐敷443-79
- TEL.0966-82-4990
- 問/10時〜17時
- ※黒砂糖は「ファーマーズマーケットでこぽん」(芦北町)、「M’s city」「もじょか堂」(水俣市)、「WHOLE SQUARE」(熊本市)などで購入できます
各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。