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(1)水俣をうたい続けた早世の詩人 淵上毛錢、生誕100年に

わらび野にある毛錢の墓

(1)水俣をうたい続けた早世の詩人 淵上毛錢、生誕100年に

2015年5月16日
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東福寺の近くを散歩すると、きれいなツツジが咲いていました。近くには水俣城跡もあります

雨上がりの澄み切った風が、草木の香りを運んでくる午後。ツツピーとさえずるシジュウカラを目で追えば、新緑のカエデを透かして降り注ぐ淡い光が目に染みます。

山と美しい海に囲まれる自然豊かな水俣市は、徳富蘇峰・蘆花、淵上毛錢など、多くの芸術的才能をはぐくんだ地です。中でも、今年は、詩人・淵上毛錢の生誕100年にあたります。

毛錢は、大正4(1915)年1月13日、芦北郡水俣町陣内(現・水俣市陣内)で生まれました。東京の中学校へ進学しましたが、学業を怠り退学。その後、音楽学校に入学し、チェロに没頭するも、20歳の時に、徴兵検査のために水俣に呼び戻された直後に、結核性股関節炎を発症。彼は、もてあます才能と病との戦いの人生を送りました。

昭和25(1950)年、35歳という若さで亡くなるまで、自宅のベッドの上で風の音や、鳥のさえずりなどに耳を傾け、みずみずしい感性で、多くの詩を書き続けました。

昭和16(1941)年の淵上毛錢。飼い犬は、彼の心を癒やしてくれたのでしょうか(水俣市立図書館蔵)

水俣市立図書館には、毛錢、直筆の手紙や詩集が所蔵されています。彼の息づかいが伝わってくるようです

同市わらび野の秋葉山中腹にある毛錢の墓を訪ねました。遠くに水俣湾をのぞむ桜の木の下にひっそりと眠る毛錢。穀雨を受けた草木が一層強く香り、鳥のさえずりしか聞こえない静謐(せいひつ)な空間にぽつんとたたずむ毛錢の墓には、バンカンが2個と、黄色と紫の菊の花が供えられ、手厚く供養されていることを感じるのでした。

市民団体「淵上毛錢を顕彰する会」事務局長を務める東福寺住職の萩嶺強さん(72)は「毛錢の詩は、分かりやすい言葉で書かれ、明るさに満ちています」と魅力を語ります。

「淵上毛錢を顕彰する会」の萩嶺強さん

「毛錢に関する資料は、予約すると見ることができます」と語る水俣市立図書館の徳冨晋一郎館長(58)

わらび野にある毛錢の墓。彼の遺志により「生きた、臥た(ねた)、書いた」と墓石の裏に刻まれています

毛錢の詩にほれ込み、曲をつけたシンガーソングライターの柏木敏治さん(59)=同市在住=は「宇宙を仰ぎ見るような詩のスケール感が好きです」。今年は毛錢に関する出前講座や講演会、合唱祭などのイベントも行われる予定です。

毛錢の詩に曲をつけるシンガーソングライターの柏木敏治さん

今も水俣の人たちの心に生き続ける毛錢。今年の墓前祭では、毛錢の詩「ぶらんこ」に曲をつけた歌を、地元声楽サークルが合唱しました(水俣市立図書館蔵)

「エコパーク水俣バラ園」入り口にある毛錢の詩碑

「再生」

野菊があたりまへに咲いてゐる
原つぱだが牛もゐない
寝ころんでみる
風が少しあるので
野菊がふるへてゐる
背中が冷めたい
どくどくと地球の脈がする
嘘のないお陽さまが
僕を溶かしてしまひさうだ
なにもかもが僕の心をきいてゐる
野菊は咲いてゐるし
ここにこのまま埋まつてしまひ
来年の野菊には
僕がひいらいたひらいた

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