
樹齢は700年とも、1000年とも。「大野下の大ソテツ」をまねて、各家の庭にソテツを植えたと言う説もあります
岱明町を歩いていると、庭にエキゾチックな風貌のソテツを植えている家を多く見かけます。なかでも、国の天然記念物に指定される大ソテツがあると聞き、訪ねてみました。
「大野下(おおのしも)の大ソテツ」を代々管理しているのが蘇鉄(そてつ)義孝さん(59)。苗字が「蘇鉄」とは出来すぎかと思えば、もともとの姓は「池松」だったそうで、明治維新の際に「蘇鉄」に改名したそうです。“ソテツ守り”としての思い入れがうかがえるエピソードです。
玉名市教育委員会の案内板によると、樹齢は700年から1000年とあります。樹高4.5m、根元の周囲2.1m、枝振りは東西11m、南北10mに伸びています。四方八方に伸びる幹は、長いものは脇に立つ蘇鉄さんの住居に届きそうな勢いです。
「前の家はもう少し庭のところまであったのですが、幹が伸びて屋根に当たるようになったので建て直したんですよ」。ソテツの成長のために家を建て替えるというほどに、蘇鉄家にとっては先祖から受け継ぐ大切な宝物なのです。
大ソテツは春先にせん定を済ませると、初夏には淡いグリーンの新芽が出ます。せん定前の先のとがった葉が当たるとチクチクと痛いそうですが、「自分の代で枯らすわけにはいきません」と、手入れの大変さも苦にならないようです。

ソテツの脇には、ほこらがありました

「見学はいつでもどうぞ。樹齢60年の八重桜も見事ですよ」と蘇鉄義孝さん
親交の温かさが伝わってくる
そしてもう一つ、大ソテツを見学できるスポットを見つけました。こちらは玉名市の天然記念物に指定される「安養寺(あんにょうじ)」の大ソテツです。イキイキと幹が伸びるソテツも見事ですが、背景に立つ本堂の壮大さにも目が奪われます。
「ソテツは樹齢500年ほど。現在の本堂は326年前に建てられました」と住職の隈部知更(くまべ ちこう)さん(49)。
聞けば寺は長和2(1013)年に築かれ、一昨年に開基1000年を迎えた由緒あるお寺です。
この日は、ちょうど親鸞聖人(しんらんしょうにん)の命日にあたり、浄土真宗本願寺派(西本願寺)の同寺でも法要が行われていました。
数百人の門徒さんが参詣し、おそろいのエプロンを着けた女性たちはチャキチャキとお斎(おとき)の準備、一方で男性たちはゆったりと参詣者の案内をしています。その様子に、お寺と門徒さんたちの、親交の温かさが伝わってくるのでした。

樹齢500年と言われる「安養寺」のソテツ

江戸時代、元禄2(1689)年に建てられた「安養寺」の本堂。欄間の彫刻は見応えがあります

餅をつなげて積み上げられた法要のお飾りの「御華束(おけそく)」

開基以来65代目の住職・隈部知更さん(右端)と門徒のみなさん
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