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(2)作家たちが集まる喫茶店 新幹線内を飾るイ草工芸

インダストリアルデザイナーの水戸岡鋭治さんプロデュースで生まれた縄のれん

(2)作家たちが集まる喫茶店 新幹線内を飾るイ草工芸

2014年10月18日
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マスターの出水 晃さん(右)。左は12年ぶり、3回目の絵画展を開いていた前田和さん

店内では、さまざまな作家の作品展示やライブなども行われます(写真の絵画は前田さんの作品)

自然と人が集まる場所があります。JR八代駅そばの「珈琲店 ミック」がそうです。マスターの出水晃さん(70)は1967(昭和42)年に、この店をオープン。ジャズが流れる店内は、ギャラリーとしても愛されています。

あめ色の椅子とテーブル、漆喰の壁が時代を重ねた色を放っています。これまで、数え切れないほどの人たちがこの場所を愛し、語らってきた、人の物語をここに感じます。

広い店内であるにもかかわらず、プライベートを大切にしてくれる空気感は独特です。「3年前に死んだうちの家内が、設計から何からしたからね。彼女の思いが詰まった空間かもしれん…」とマスターの出水さん。

訪ねた日の店内には、網田焼 蒼土窯の前田和さん(70)=宇土市=の作品が並べられていました。

「マスターは作家にとって“親父”みたいな存在。ママは作品を見る目がすごくあって、この辺の陶芸家は新作をつくるたびに意見を求めに来ていました。今は娘さんがその役割。ママや娘さん、マスターと話すことで作家が奮い立つんです。ここは文化発祥の地ですよ」と前田さんがほほ笑む隣で、出水さんは、「文化人って呼ばれるとが一番好かんとたい」と苦笑します。

「妻の感性を受け継いどっとが娘。親父が言うのも何ばってん、すごいセンスだけん、頭んあがらんたい」

そんな、カラッと気取らない言葉の奥には、美しく成長した愛娘への父親の愛の深さを感じます。

問い合わせ

珈琲店 ミック

 

これがイ草? と驚くようなアイデア満載の作品

さて、八代を語る上で忘れてはならないのがイ草です。畳だけではなく、モダンなリビングに合う敷物やオブジェ、バッグなど自然な風合いを生かした作品に人気が集まっています。

「い草縄工房 井上産業」(井上昭光代表=67)は、イ草を使った細縄細工を多数手がけています。インダストリアルデザイナーの水戸岡鋭治さんのプロデュースで誕生した縄のれんは、九州新幹線「つばめ」にも用いられています。

工房に一歩足を踏み入れると、青畳のような清々しい香りがします。

「以前はワラで細工を作っていましたが、材料をイグサに変えたことで細かな元縄がなえるようになり、室内装飾品を作れるようにようになりました」と井上代表。猫伏(ねこぶく=敷物)や円座、テーブル、座椅子、注連縄、トートバッグ。変わったところではヘルメットカバーなど、これがイ草? と驚くようなアイデア満載の作品が並んでいます。

伝統の技が生みだす新しさに目を見張ります。

井上産業の工場一角にある小上がり。イ草の縄のれんや猫伏で仕立てられたこの空間が心地よく、仕事を忘れてつい長居してしまいました(猫伏は1畳3万円程度で広さに応じてオーダー可)

インダストリアルデザイナーの水戸岡鋭治さんプロデュースで生まれた縄のれん(2万7000円)。これからの季節にうれしいしめ飾り(3000円)。色も選べ、インテリアや新築祝いなどにも人気です

右から井上昭光さんと妻・タキエさん(67)、息子の謙次郎さん(41)。昭光さんは今夜(18日)開催の「やつしろ全国花火競技大会」会場でイ草製品の製造実演予定

問い合わせ

い草縄工房 井上産業