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(1)初夏の川面によぎる 古の宿場のにぎわい

(1)初夏の川面によぎる 古の宿場のにぎわい

2014年6月21日
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塘町筋を流れる豊かな「上井手」の流れ

どうどうと音を立てて流れ落ちる水が川床の段差にたたきつけられると、勢いを増した水流が、太く束ねた真っ白な絹糸を一気に解き放ったように光の筋となってほとばしります。

ここは、菊池郡大津町中心部を流れる「上井手(うわいで)用水」。江戸初期の建造で、瀬田で白川から取水される灌漑(かんがい)用水です。

その開削工事に伴って形成された堤(塘=とも)に沿って豊後往還が設けられ、かつて一帯は、宿場「塘町(とうまち)筋」としてにぎわいました。

昭和30年代の建築で、まるで当時の町から抜け出てきたような「小松屋」

「小松屋」前の上井手風景。すがすがしい緑が陰を作ります

「小松屋」の大塚サチ子さんと斉子さん。愛犬のテディとともに

流れの岸辺で、水しぶきがすぐそこまで触れんばかりの近さにたたずむのは一本の梅の古木。走り梅雨を控えて、青々と茂る樹上の葉が一層その濃さを増したようです。

その梅の木の対岸で、軒端(のきば)に雅な風情を漂わせるのは、レトロな店構えの酒卸店「小松屋」です。

歳月が渋皮色に染めた木戸には、ツヤ消しの金文字で太く描かれた屋号。2階を見上げると、窓のすりガラスに施した流水模様の細工が目に入り、川筋の店にマッチした意匠の巧みさに感じ入ります。

「その昔は、2階の二間続きのお座敷に巡業中のお相撲さんが遊びに来たりして、それはにぎやかな宴がありました」と話すのは、同店の大塚サチ子さん(81)。

「よく顔が似ていると言われます(笑)」というお嫁さんの斉子さん(51)と、仲良く写真に収まってくれました。

お二人の笑顔に見送られて川筋をそぞろ歩けば、流れにかかる「光尊寺(こうそんじ)橋」の風雅な姿が目に止まります。「疏水百選」に選ばれたこの川筋に沿って歩くのも涼しげです。

「綿屋製菓」の向かいにある「光尊寺」に通じる「光尊寺橋」。「塘町筋」にはこのほかにも3つの石橋があります