祖母の代から変わらぬ白髪そうめん「雪の糸素麺」のパッケージ。そのレトロさが歴史を伝えます

南関町の特産品の一つが「南関そうめん」。300年以上の歴史があり、江戸時代の参勤交代では細川家の幕府献上品として用いられました。細くて白く、ゆでても伸びにくいなどの特徴から、江戸では「肥後にはうまい麺あり」と評判が広がったそうです。

最盛期は約2百軒でつくられていたそうですが、現在は10軒が残るのみとなりました。夏の食べ物としてのイメージがあるそうめんですが、実は、寒さが厳しくなるこれからの時期が、そうめん作りに適した季節です。天気のいい日は、風に揺れるそうめん干しの光景が見られることもあります。

南関そうめんは、手延べ製法が主流。工程はいたってシンプルですが、だからこそ技がものをいう世界でもあります。なかでも「猿渡製麺所」の9代目、井形朝香さん(83)が作る「白髪そうめん」は、木綿針の穴に3本のそうめんが通るほどの細さで、コシも強く、祖母直伝の製法で作られています。

「父が戦死し、母も私が11歳の時に亡くなったので、母方の祖母に引き取られました。そうめん作りの手伝いを始めたのは、小学3年の頃。ばあちゃんはそうめん作りになると厳しくてね。何度も家出しようと思ったけど、当時の国鉄バスの始発は5時過ぎ。早朝3時にはそうめん作りが始まるけん、こっそり逃げ出すこともかなわんだった(笑)」と、懐かしそうに当時を振り返ります。

「かけばた」は、小麦粉に塩と水を混ぜて練り、平らに延ばしたものを細くひも状にして丸めて8の字を描くようにかけていくための道具。この道具を使って麺を形成し、数時間寝かせたものをさらに延ばして天日干しにします

麺を切るのに使われる包丁は、祖母から受け継いだもの。200年以上使われているそうです

18歳になると製麺所の後継ぎとして、本格的に働き始めた井形さん。後継者を育てることを考えたこともあったものの、継承できる人はいませんでした。

かつてはスタッフ総出でにぎやかに麺作りをしていたそう。写真手前が若かりし頃の朝香さん

老舗のしょうゆ店や衣料品店などが立ち並び、懐かしい風情が漂う商店街

「白髪そうめんは誰でん作りきるもんじゃなか。この麺はもう、私の代で終わりです」という言葉に、伝統が途絶えることの切なさと同時に、井形さんの職人としての誇りを見た気がします。

井形朝香さん(右)と、娘の師富(もろとみ)直美さん(59)

猿渡製麺所

玉名郡南関町関町1417

TEL.0968-53-2106

営/9時〜16時

休/不定

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