大正時代に建てられた酒蔵で、赤酒をはじめ瑞鷹の酒を販売する「瑞鷹大正蔵」。裏の通路を通れば隣接する「くまもと工芸会館」につながっています

川尻のランドマーク的存在が、1867(慶応3)年に創業した現在の「瑞鷹」です。しっくいの白壁に瓦屋根の軒が連なる本蔵は、川尻の景観を代表する建物でしたが、2016(平成28)年の熊本地震で大きな被害を受けました。瑞鷹の大小約100棟ある建物のうち約7割が倒壊・損壊しました。その中には江戸から大正にかけて建てられた蔵も含まれていました。

「出荷を予定していた赤酒の荷が4月14日の前震で大量に壊れ、それでもめげずに翌日の15日に全部詰め直したにも関わらず、16日の本震で再度割れてしまいました。さすがにショックは大きく、先が見えない状態に途方に暮れました」と話すのは、常務の吉村謙太郎さん(45)です。

「災害支援を通じて、熊本をはじめ全国の酒蔵とつながりが持てました。この夏の豪雨でも各地の酒蔵が被害を受けたので、支援のお返しを考えています」と吉村謙太郎さん

全国からの温かい支援を受けながらも、蔵の中の片付け、貯蔵タンクや蔵の修理など、膨大な復興作業は気が遠くなるほどの大変さだったようです。

そんな中「赤酒の存在の大きさにも気付かされた」と吉村さんは言います。赤酒は熊本の正月に欠かせない縁起物。「『赤酒がないと困る』『あるだけ送って欲しい』という取引先や、ラベルがはがれた商品でもいいから送ってくれと言われたこともありました」

そのオーダーに応えるのは無理でしたが、「赤酒がこれほどまでに求められたことに、胸が熱くなりました。そこで震災後の10月には清酒を仕込み、お正月には赤酒を出すことを目標とし、蔵の復旧と同時進行で進めました」と吉村さん。

写真左から、大吟醸のもろみを、酒袋に入れてつるし、滴り落ちたしずくを集めた「瑞鷹大吟醸 雫取り」720ml5400円、おとそや料理に使える「本伝 東肥赤酒」720ml730円

美しい白壁がよみがえった現在の本蔵。地震直後は白壁がボロボロに崩れていましたが、公道沿いにあるため急ピッチで修復されました

そして今年2月には、赤酒を仕込む大正時代の「東肥蔵」を建て直して名前も「平成北蔵」と変えました。また3月には明治30年代に建てられた「大蔵」が「平成大蔵」に建て替わるなど、新しい蔵が次々に完成しました。「支援してくれた多くの方々への恩返しのためにおいしい日本酒と赤酒を造り続けたいと思っています」と吉村さん。

4階建ての瑞鷹本蔵の裏手にあった「大蔵」を建て替え、3月に完成した「平成大蔵」

大規模半壊した瑞鷹東肥蔵の「北蔵」「中蔵」の跡に建てられた「平成北蔵」。ここではタンク貯蔵や圧搾作業などが行われています

熊本が誇る赤酒は、加藤清正の時代には庶民に親しまれ、細川時代には「お国酒」として守られていました。江戸時代には、赤酒以外の酒の製造も、他藩から酒を仕入れることも禁じられていたほどでした。もしかすると、川尻にやってきた西郷隆盛も赤酒を味わったのかもしれません。

「瑞鷹大正蔵」に展示された川尻本陣で酒を飲む西郷隆盛の錦絵。大杯になみなみと注がれるのは赤酒かもしれません

瑞鷹東肥蔵/販売所「大正蔵」

熊本市南区川尻1-3-72

TEL.096-357-7251

営/10時~17時

休/なし

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