毎年、益城町に春を呼ぶ催しが、3月の「木山初市」。江戸時代に木山の商人たちが始め、約200年の歴史があります。歩行者天国になる木山横町通りには出店や植木市などが並び、多くの人でにぎわいます。

熊本地震から2年後の2018年に横町通りで開かれた初市の様子(写真=益城町商工会)

「初市」名物が「市(いち)だご」。米の粉で作った団子をこしあんでくるんだ素朴な甘味で、昔は「初市」の頃には各家庭で作られ、丸形、俵形、串に刺したものなど、形もいろいろだったそうです。それぞれの家庭で作る市だごは親戚や知り合いに配り、また、相手からもいただくなど、〝市だご交換〟のやりとりが行われていたそうです。

今では自分で作る家庭も少なくなりましたが、初市の季節になると、町の人たちは市だごを通年販売している「九ちゃん万十」を訪れます。

特別に「九ちゃん万十」で再現してもらった昔の「市だご」

黄色いテントが目印の「九ちゃん万十」。「米万十」1パック5個入り475円や「いきなりだご」1個110円などもおすすめです


昔ながらの市だごのオーダーも

「砂糖が貴重だった昔、市だごは何よりのごちそうでした」と話すのは、「九ちゃん万十」を営む池上秋江さん(80)です。秋江さんは、若い頃から初市が近づくと母親に教わって市だごをこしらえたそうです。店を営むようになってからは、食べやすい形の市だごを作るようになりました。現在、娘の松原恵美(51)さんと一緒に作る「市だご」は、小判形の団子をなめらかなこしあんで包んだものです。

今では「市だご屋さん」とも呼ばれるほど「九ちゃん万十」の代名詞となった「市だご」1パック5個入り475円

ふっくらやわらかな生地に自家製のあずきあん(写真右)、白あんがたっぷり詰まった「ソーダ万十」1個95円。手土産に人気です

一つ一つ丁寧にあんにくるんでいきます

高齢のお客様の中には「昔の市だごは、丸めた団子にあんをからませてあった。それが食べたい」という注文もあるそうです。

「やはり、それぞれの思い出の市だごがあるんでしょうね。できる限り、ご要望にお応えしたいと思っています。あらかじめ予約していただくと助かります」と秋江さん。

毎年、「初市」の日は、秋江さんたち親子は目が回るほどの忙しさだそうですが、昨年、今年と続けて、コロナ禍で開催が見合わされました。それでも、しっかりとマスクで予防してお店に出掛け、益城の春の風物詩となった「市だご」をほお張れば、初市の華やぐ気持ちが胸によみがえるのではないでしょうか。

熊本地震直後は、避難先で小豆を炊き、万十を作ってボランティアの人たちに届けたという池上秋江さん。震災から半年で店を立て直しました

「初市の日は毎年、家族総出で『市だご』を作ります」と、娘の松原恵美さんは、秋江さんの味をしっかり受け継いでいます

九ちゃん万十

上益城郡益城町木山352

TEL.096-286-9525

営/9時~売り切れ次第終了

休/月曜、第3日曜


旅のおみやげ 益城町 復興を支えた益城のソウルフード

一度食べたら忘れられない具だくさんの「太巻き」1本756円。テイクアウトは予約がおすすめです

益城町で70年続く老舗の料理店「四季の味 やまもとや」。この店の名物が「太巻き」。甘辛く煮たかんぴょうと卵焼き、桜でんぶ、三つ葉の風味が合わさる巻き寿司は、酢飯の量を具が上回っています。

同店も熊本地震で店舗が全壊。しかし、地震から2カ月後には、どうにか無事だった別館でお弁当や太巻きを販売し被災者の心とお腹を満たしました。「お客さんに『変わらない味でほっとする』と言っていただき、うれしかったです」と話すのは、3代目の山本剛大さん(35)です。

「代々受け継がれてきた味を、これからも大切に守っていきたい」と山本さん。太巻きはテイクアウトのほか、ランチでもいただけます。

「安心してお食事が楽しめるよう、客席にアクリル板を置くなど感染症対策に取り組んでいます」と山本さん

四季の味やまもとや

上益城郡益城町安永575-2

TEL.096-286-2017

営/11時半~OS14時、17時~20時半(夜は5名以上で要予約)

休/水曜


旅の終わりに・・・

益城町を取材した日はこの冬一番の寒さで、雪が舞っていました。しかし、「四賢婦人」の一人・矢嶋楫子のパワフルに生きた人生や、志賀哲太郎の信念など、益城町ゆかりの偉人たちの生き方に触れ、胸が熱くなりました。

熊本地震からもうすぐ5年。震源地だった益城町と、そこで暮らす皆さんは、それぞれの目標に向かって歩み続けています。そんなパワーが町にあふれているせいか、空から舞い落ちる雪も、すぐに地面に溶けていきました。


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