代々使われてきた作業台の上には、活字と活字の隙間を埋める鉛の板や、空白をつくる「込めもの」が何種類も。見るものすべてがむしろ新鮮です

白壁造りの「池田活版印刷所」。「熊本県庁跡」の標柱も立っています

「街なかギャラリー」の隣にあるのが、1890(明治23)年創業の「池田活版印刷所」です。今も、昔ながらの鉛の活字を使う活版印刷が行われています。建物の一角に「県庁跡」の標柱が立ち、西南戦争時に、2日間だけ県庁が置かれたことを伝えています。

「いらっしゃいませ」と朗らかに迎えてくれたのは、5代目の吉田典子さん(66)です。昔から変わらないという建物の中には、鉛の活字を並べた棚がずらり。角が丸くなるほど使い込まれた古い作業台や、黒光りのする印刷機が歴史を感じさせます。

公務員として働いていた吉田さんは退職後、実家の商売を継ぎました。「インクの匂いや印刷機の音を聞いて育ったので、亡くなった両親の生き方をたどってみたくて跡を継ぐことにしました」と話します。それまで活版印刷の工程すら知らなかった吉田さんでしたが、この道50年のベテランで、先代と働いていた永戸寿美子さん(82)の協力で、印刷所を再興しました。

「熊本地震後、ボランティアのみなさんから『宝物』と言われたことが励みになった」と言う吉田さん。活版印刷の体験もできます

活字棚から1本ずつ活字を取り出す永戸さん。どこにどんな文字があるか、ほとんど覚えているそうです

活版印刷は、活版文字の凹凸や微妙な並び具合など、デジタル全盛の印刷とは異なる味わいがあります。吉田さんが考案した2021年のカレンダーには、型押しのデザインが施されており、懐かしくも新鮮に映ります。

型押し模様を入れた2021年のカレンダー(税込み、2500円)。「御船町観光交流センター」でも販売しています

2016年4月の熊本地震では活字棚が倒れ、鉛活字が作業場中に散乱する被害が出ました。「心が折れそうになった時、ボランティアの若い人たちから『活版印刷ってかっこいい』『絶対、残してほしい』と言われて力が湧きました」と吉田さん。半年にわたり、活字を1本1本拾って棚の元の場所に戻す作業を手伝ってくれたそうです。

池田活版印刷所には、文字にこだわる人たちから名刺や年賀はがき、俳句集などの注文も寄せられるそうです。

毎日自転車で通勤しているという永戸さん

鉛の活字で「くまにちあれんじ」と組んでもらいました

池田活版印刷所

上益城郡御船町御船795

TEL.096-282-0069

営/9時~17時

休/土・日曜、祝日(応相談)

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