公園内でひときわ目を引く「浦島屋」の建物。1993年に復元

開港後の繁栄の風景を残した一枚(資料提供=宇城市教育委員会)

夏の盛りの三角ノ瀬戸は深緑色をたたえ、穏やかにないでいました。太陽は頭上から照り付けてきますが、木陰に入れば少しは暑さもやわらぎます。

さて、今回の三角町を巡る旅の最初のテーマは「歴史」です。まず訪れたのは、三角西港公園。ここは、1887(明治20)年に開港した三角西港(旧三角港)の場所です。有明海と不知火海の両方に面し、石炭の積出港として栄えた近代築港の面影を今に残す貴重な歴史遺産です。2015(平成27)年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として世界遺産に登録されました。

設計者はオランダ人のローエン・ホルスト・ムルドル。山を切り開き、海を埋め立てて港湾を建設し、ヨーロッパ式の港湾と市街地を造り上げました。岸壁の全長は750m余り。公園前を通る国道57号の道幅は当時のままだそうで、この一帯が明治の日本の常識を超えた港湾都市だったことが分かります。

工事に携わったのが、長崎のグラバー邸などを手掛けた小山秀(こやまひいで)が率いた天草石工たちでした。130年以上も前につくられた岸壁の石積みは、今もがっしりとしています。

水路の石積みは、上から2段分が垂直で、その下は奥に見える三角岳の形と対称的になるように斜めに組んであります

園内に入り、ひときわ目を引く建物が「浦島屋」です。薄緑色の柱と板壁の外観のコントラストが美しく、前庭の芝生の緑が映えます。開港時に建てられた旅館で、1993(平成5)年に写真を元に復元されました。1893年7月には、当時の第五高等学校教師だったラフカディオ・ハーンが滞在し、その思い出を紀行文「夏の日の夢」にまとめています。

建物に入り、中央の大きな階段を上ってバルコニーに出れば、瀬戸の向こうに大矢野島を望む開放的な景観が広がります。風が渡って波頭がきらめき、トンビが気持ち良さそうに青空を旋回しました。ハーンもまた、この美しい光景を心に刻んだことでしょう。

柱一つとっても、細かくデザインされている浦島屋の入り口

龍驤館・浦島屋・法の館・旧高田回漕店の歴史について

宇城市教育委員会文化課

宇城市松橋町大野85

TEL.0964-32-1954

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