形の美しさから「天草富士」とも呼ばれる高杢島。引き潮時は松島町の樋合島と陸続きになり、歩いて渡ることができます

大矢野島の海岸線を車で走ると、波静かな海に緑の島々がぽっかり浮かぶ風景が目に入ってきます。以前、あれんじの取材で訪れた際、この町に住む洋画家が「フランスのモンサンミシェルのようだ」と教えてくれた島のことを思い出しました。大矢野島の鯨道(くじらみち)海岸から望む松島町の高杢(たかもく)島のことです。久々に眺める高杢島は、変わらず古城のようなたたずまいを見せていました。引き潮で海底が現れると、対岸にある松島町の樋合島から歩いて渡れます。

鯨道海岸にある船だまりの近くに、大きなアコウの木があります。ちょうど、自転車に乗った少女2人に出会いました。「おばあちゃんの家に行く途中です。今は学校の先生から『人と距離をとって行動しなさい』と言われていて、自転車に乗ってきました」と、小学生の野口輝(ひかり)さん(11)と吉本愛夢(あいむ)さん(11)。「気をつけてね」と声をかけると、「ありがとうございます」と礼儀正しい返事が返ってきました。

鯨道海岸のアコウの木の近くで出会った吉本愛夢さん(左)と野口輝さん


大矢野随一の漁港 漁船に乗る女子高校生

天草パールラインの国道266号を横切り、島の東側へ回り込みます。ここには大矢野の水揚げを一手に引き受ける柳港があります。取材に訪れたのは桜が満開の頃。「今ならサクラダイ、6月からはハモが旬です。特にハモは『黄金のハモ』のブランドで、関東・関西で大人気です」と話すのは、天草漁協上天草総合支所の江口美好さん(41)です。

「魚種が豊富なのも上天草の魅力です」と江口美好さん。5月からは、ヒラメ、スズキなどが旬を迎えます

漁港にコノシロ漁を終えた漁船が入ってきました。岸壁に漁船が着くと、リフトが下ろされます。船の上では水槽の魚を網ですくってリフトへ移すという作業が繰り返され、大量のコノシロが水揚げされました。

マリンフォークリフトのコンテナへ魚を移し替える元濵樹華さん。この日はコノシロが大漁でした

水揚げされたコノシロはすぐに選別され、田崎市場へ送られます

ミネラルが豊富な「黄金のハモ」。体も黄金色に輝いています

近海でとれる甲イカも水揚げされていました。身が柔らかく、すしや刺し身に欠かせないネタです

驚いたのは、そんな力の要る作業をしていたのが女子高校生の元濵樹華(じゅか)さん(17)だったということ。船のかじを取っていたのは、現役漁師の祖父・隆幸さん(83)。近くで父親の隆広さん(48)が作業を見守っていました。

高校3年生になる樹華さんは学校が休みのたびに漁を手伝っているそうです。「もう、かわゆうしてかわゆうして、なりまっせん。孫が船に乗るちゅうときは、私も張り切ってかじを取ります」と隆幸さんが目を細めます。「船に乗るのは大好きですが、将来は看護師になって地元で働くつもりです」と話す樹華さんの笑顔を見る隆幸さんの目尻がどんどん下がっていきました。

水揚げを終え、船から下りた元濵さん家族。左から、元濵隆広さん、隆幸さん、樹華さん

電話ボックスと思ったら、セルフのガソリンスタンド。船、車両方に給油できるそうです

天草漁業協同組合上天草総合支所

上天草市大矢野町中10043-37

TEL.0964-57-0336

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