
8年前にオープンした山鹿のランドマークの「山鹿温泉さくら湯」
湯の町・山鹿のランドマークが「山鹿温泉さくら湯」です。江戸時代は熊本藩の山鹿御茶屋が置かれ、明治から昭和に入ると市民の温泉場として親しまれました。
8年前、1973(昭和48)年に解体された明治時代の雰囲気を残す建物の姿を再生した温泉施設として生まれ変わっています。県内外から多くの人たちが訪れる観光名所の一つです。
さらに豊前街道を南下すると、町屋情緒を大切に残した街並みが続きます。創刊号の表紙を飾った「千代の園」界わいの風景も、当時のままです。
天保年間に創業した「木屋本店」
「ここのこうじでないと」という多くのファンを持つ「木屋本店」のこうじ
そしてもう一組、この旅で会いたい人たちがいました。10年前の取材で、楽しい話を聞かせてくれたこうじ専門店「木屋本店」の井口圭祐さん(66)と妻の文子さん(64)です。
創刊号の写真を見て「10年前は若かったなぁ」と笑う井口さん夫婦。左は10年前の井口さん夫婦。気さくな人柄は変わっていません
「もう、そがんなるですたいね。あれんじ10周年おめでとうございます」と、井口さん夫婦は当時のように優しい笑顔で迎えてくれました。1831(天保2)年に創業し、約190年続く老舗の風格も健在です。
「八千代座をはじめ、再生したさくら湯など、10年前と比べて山鹿の街は元気になりました。けれどこの春、ただただ残念だったのは、新型コロナウイルスの影響で春の新酒祭りが中止になったこと。若い人たちと一緒にみんなで盛り上げようと期待が大きかっただけにね」と圭祐さんは肩を落とします。
それでもいつかこの事態が終息する日はやってきます。世の中が落ち着いたら、山鹿の街を元気に歩きましょう。そこかしこにあふれる人情に、心がしみじみと温まるはずです。
10年前に取材で食べさせてもらった「甘酒アイスクリーム」と「甘酒抹茶アイスクリーム」各260円も売られていました
「木屋本店」の「火の国甘酒(左)」450円と、野菜、魚や肉料理にかけるだけでおいしい「ひとてま酢」380円は贈り物にも人気
「また、10年後も取材に来てね」と井口さん夫婦に見送られ、菊池川まで足を運びました。太陽が差した川面はキラキラと輝き、河岸には活力をくれるようにビタミンカラーの菜の花が咲いていました。
豊前街道にたたずむ、酒蔵「千代の園」の本店
豊前街道巡りの最後に見た、春ののどかな菊池川の光景
創刊は今から10年前 2010年4月3日でした!
現在
10年前
10年前の創刊号表紙の風景は何ひとつ変わっておらず、心がほっと落ち着きました
旅の終わりに
この日、豊前街道の人通りはとても少なく感じました。ここにも新型コロナウイルスの影響がありました。「じっと耐えるしかなか」と言った井口さんの言葉が胸に残ります。
10年前、私たちは山鹿の街を一日かけてたっぷり歩きました。この日も、同じルートを巡りました。何も変わっていないものを確認できたうれしさや、新しい取り組みに力を注ぐ人たちからエネルギーをもらう喜びがありました。
また、昔ながらの風情ある街並みの美しさに人々の郷土愛を感じ、山鹿という、歴史に裏打ちされた街の良さを再確認できました。
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