堂々としたたたずまいの八千代座

10年前も、うららかな春の陽気に包まれながら、山鹿市中心部を貫く豊前街道を歩きました。創刊に向けての取材旅に胸が高鳴ったことを覚えています。今回の撮影も同じカメラマンです。あらためて創刊号をめくりながら山鹿の街を歩けば、当時のことが走馬灯のように脳裏に浮かんできます。

そういえばあの時も、八千代座のいぶし銀の屋根瓦が青空に映え、美しいエッジを描いていました。そして、今も変わらないその堂々としたたたずまいに心が動かされます。ただ残念なことに、新型コロナウイルスの影響もあって、掲示板には、いくつもの催し物の中止の知らせが出ていました。

さて、この旅で会いたかったのが、当時28歳だった竹工作家で「ギャラリー百花堂」を母親と営む、木部大資さん(38)です。記憶によると、うなぎの寝床のように細長い古い町屋の一角がギャラリーになっていて、その奥の作業場で製作に没頭していた姿が思い出されます。

10年前と少しも変わっていなかった木部大資さん。左は28歳のときにお会いした木部さん

「お久しぶりです」と穏やかな笑顔で迎えてくれた木部さんを前にしてびっくり。10年前と同じ丸刈りで、表情も体形も全くといっていいほど変わっていません。「白髪が増えました」と照れ笑いする木部さんは現在も、茶の湯で使う茶杓(ちゃしゃく)などの作品作りに取り組んでいるそうです。

木部さんが手掛けている、耳かきや茶の湯の茶杓などの作品

熊本市在住の陶芸作家・西田美紀さんの作品も展示されていました

「10年たって街の様子もずいぶん変わりました。でも私もこの場所も、何も変わっていません」と木部さんは静かに話します。丁寧に磨かれた板の間の向こうに見える中庭は当時のまま。まるで、時の流れが止まっているかのような錯覚を覚えます。

そしてあの作業場も、何一つ変わっていませんでした。木部さんは「これまでもこれからも、同じペースで生きていきたい」と願っているそうです。

10年前と同じ作業場で作品に取り組んでいた木部さん

板の間の向こうに見える中庭の風情も変わっていません

春とはいえ、まだ寒さが残る日で、私たちのために炭をいけた火鉢を用意してくれていました。鉄瓶から上る穏やかな湯気に、心がほぐれていきました。

山野草などの植物も大切に育てられていました

火鉢の鉄瓶の湯気に癒やされます

ギャラリー百花堂

山鹿市山鹿1371

TEL.080-6426-4519

営/11時〜17時

休/不定

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