昨年3月にリニューアルオープンした寛政蔵。蔵から見える池には、コイが悠々と泳いでいました

矢部の浜町は13世紀初頭、阿蘇神社の大宮司も務めた阿蘇氏の「浜の館」が建てられ、以後、矢部郷の政治・経済の中心として栄えました。

その浜町で1770(明和7)年に創業した造り酒屋が「通潤酒造」です。店先の屋根に飾られた大きな杉玉や白壁、格子、そして竹の犬矢来(いぬやらい)を施した風情あるたたずまいが歴史を感じさせます。工場では新酒の仕込みが続いていました。酒米を蒸す湯気が勢いよく青空に立ち上り、辺りには甘い香りが漂います。

熊本地震で被災し、昨年3月にリニューアルオープンしたのが、1792(寛政4)年に建った県内最古の酒蔵「寛政蔵(かんせいぐら)」。通潤酒造で作られた3銘柄をワイングラスで有料試飲できる、全国でも珍しいスタイルの観光酒蔵です。

「通潤厳選 利き酒セット」(1100円)。「ソムリエ厳選 利き酒セット」(2200円)も人気。いずれも箸休め付き

寛政蔵内は、落ち着いた空間。ここでいただく日本酒は最高

寛政蔵は、ノンアルコールの甘酒(660円)や、「矢部茶アフォガード」(900円)などのスイーツも楽しめます

2016年の熊本地震では寛政蔵をはじめ、10棟の蔵が被災したそうです。再建にあたり、「壊れた酒蔵を元の姿に戻すだけでいいのだろうかと自問自答しました」と話すのは、山下泰雄社長(56)です。

「酒は、“百薬の長”。山都町産のオーガニック野菜を提供するマルシェを開催するなど、ここを健康発信の拠点にしたい」と話す通潤酒造の山下泰雄社長

さまざまな葛藤と試行錯誤が続く中、山下さんはワインツーリズムで注目を集めるアメリカ・ナパバレーを視察。そこで、これまでの価値観をくつがえすような経験をしたといいます。

「ブドウが育った土壌や、味の特徴などを、豊富な知識を持つスタッフが説明してくれるんです。気持ちの良い空間、洗練されたサービス、そしておいしいワイン。試飲は有料でも、満足度は高くワクワクしました」

そして山下さんは「酒蔵の雰囲気を味わってもらいながら、質の良いサービスでゆったりと試飲を楽しんでいただける空間」づくりを目指したそうです。

生まれ変わった寛政蔵は、随所に昔ながらの柱や梁(はり)を再利用してあります。酒蔵ならではの落ち着いた風情が漂い、どこかヨーロッパの老舗バーのような雰囲気も感じられる洗練された空間です。もちろん、お酒の説明を受けながらゆったりと試飲を楽しむことができます。

通潤酒造。無料の酒蔵見学も行っています(要予約)

山都町産の酒米を使った新酒の仕込み中でした

寛政蔵は女性を中心に話題となり、国内外から半年間で約1万人が訪れる町の新名所になりました。山下さんは「今年は、創業250年の節目の年。お酒を楽しむだけでなく、マルシェやコンサートなど、さまざまなイベントを仕掛けて山都町を元気にしたい」と意気込みます。

通潤酒造

上益城郡山都町浜町54

TEL.0967-72-1177

営/9時~17時

休/第2、第4日曜

次は:(4)スパイスたっぷりで本格的な味わい「通潤橋カレー」


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