不知火海に浮かぶ3つの島を望む「三ツ島海水浴場」。砂浜の間に芝生の広場があり、キャンプやバーベキューも楽しめます

複雑に入り組んだリアス式海岸が続く津奈木町。藍色の不知火海に浮かぶ3つの小さな島を一度に眺められる場所が「三ツ島(みつしま)海水浴場」です。冬場で人影のない海岸ですが、静かな波音と陽光は心地よく、海岸を歩いていると人なつこい猫が寄ってきます。

三ツ島海水浴場から海岸沿いに車で南下すると、高台に立つ旧平国小学校の校舎が見えてきます。平国小は2016(平成28)年、津奈木小に統合され、校舎跡は地域コミュニティーの活動の場として使われています。毎年1月〜4月末までの土日、祝日には、津奈木漁協が運営する「つなぎオイスターバル」がオープンします。

さて、取材に訪れた日、校舎跡の一角では画家の大平由香理さん(31)が、10畳ほどはあろうかという巨大なキャンバスに向き合っていました。

「『アーティスト・イン・レジデンスつなぎ』は憧れていたプログラム。参加できて幸せです」と大平由香理さん

12月の個展に向けて最後の追い込み中。大平由香理展「海鳴り」は、「つなぎ美術館」で12月7日(土)~2月11日(火・祝)開催

岐阜県出身の大平さんは現在、大分県別府市在住ですが、津奈木町とは町が実施している「アーティスト・イン・レジデンスつなぎ」でご縁が生まれたそうです。全国のアーティストに4カ月ほど津奈木町に滞在してもらい、作品制作を町が支援するという取り組みで、2014年に始まりました。

顔料をはじめ、アクリル絵具や砂などを混ぜて描く大平さんの作品。色を重ねて生まれる陰影に力強さを感じます

町立つなぎ美術館学芸員の楠本智郎さん(53)は「町立の美術館は、その土地に縁がある芸術家やコレクターの作品があって設置される例が多いのですが、津奈木にはそれがない。だったら全国の芸術家に津奈木町に滞在してもらい、住民との縁を深めてもらおうと始めました」と言います。

今年は大平さんが選ばれ、大平さんは8月から平国地区の一軒屋に暮らし、12月7日(土)に始まる成果展「海鳴り」に向けて制作を続けています。「別府の海も好きですが、津奈木の海は違った美しさがあります。特に海に沈む夕日の色に心が動かされます」

作品には、海に浮かぶ島々や夕日に包まれた重盤岩(ちょうはんがん)など、津奈木町の風景が描かれています。「漁師さんたちが『船に乗ってみるかい?』と作品づくりに協力してくれ、沖で見た海の色や船上で体感した波の揺れなどが作品の下地になりました」と大平さんは話します。

津奈木町のシンボル「重盤岩」。上皇さまの誕生を祝って国旗が掲揚されて以来、山を渡る風に日の丸がたなびいています

「魚や野菜をいただいたり、散歩の途中で声を掛けてもらったり、みなさん親身になってよくしてくださいます。夏休み中は子どもたちがアトリエに遊びに来てくれて、一緒に絵を描いたりしました」と地域の人たちとの付き合いも楽しそうで、「この町を離れる日が来ることを考えるのがつらい」と漏らしました。

黒板にはアトリエに遊びに来た地域の子どもたちの作品が

つなぎ美術館

津奈木町岩城494

TEL.0966-61-2222

営/10時~17時(入館は16時半まで)

休/水曜(祝日の場合は翌日休み、12月29日~1月3日は休み)

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