百太郎溝に水を取り込んだ「百太郎堰(ぜき)」

桜の季節になると花見客でにぎわう百太郎公園。石碑にはアユを詠んだ句が記されていました

さて、多良木町を語る上で欠かせないものが、球磨川の水で広大な球磨盆地を潤す「幸野溝(こうのみぞ)」と「百太郎溝(ひゃくたろうみぞ)」です。

このうち鎌倉時代から江戸時代にかけて造られた百太郎溝は、人柱伝説が残るほどの難工事だったそうです。藩の援助や指導もなく、農民総出で全長19 に及ぶかんがい用水路を掘り、多良木町からあさぎり町、錦町の耕作地を潤しています。現代のように機械や重機のない時代の工事のことを考えると気が遠くなります。先人たちの知恵と努力を伝え、上球磨の暮らしを支える二つの用水路は2016年、「世界かんがい施設遺産」に認定されました。

農家民宿「ゆうがの杜」。のどかな田園地帯にひっそりたたずむ宿で、素朴なもてなしが人気です

百太郎溝のすぐそばにある農家民宿「ゆうがの杜」は、宮本裕子さん(64)が切り盛りする民宿です。料理好きと人好きが高じて、農家民宿を始めたという裕子さん。家の周りで米をはじめ十数種類の野菜などを栽培し、それらを使った食事を提供してきましたが、それだけでは物足りずラーメン店も始めました。試行錯誤を重ねて完成したのが鶏ガラと野菜ベースの塩ラーメンです。この日はあいにく仕込みの途中で残念ながらありつけませんでしたが、お茶請けにと出していただいたおにぎりと福神漬にびっくりしました。箸が止まらなくなるとはこのことです。

裕子さん特製の大ぶりに切った福神漬。一般的には7種だそうですが、ナタマメやミョウガ、レンコンなど8種の野菜の食感が楽しい一品

甘辛く炊いたエゴマの葉でくるんだおにぎり。ニンニクの風味がきいていておかずいらずのおいしさでした

ずいぶん大きなナタマメにびっくり

自家菜園ではナタマメやトウガラシ、数々の葉野菜が栽培されていました

「もっといろんな人とふれあいたくて、夜は予約限定の居酒屋も始めました。いろんな出会いがあって毎日が幸せです。こういうのはきっと、金もうけじゃなくて、“人もうけ”っていうとでしょうね」と裕子さんが朗らかに笑います。食事のおいしさもさることながら、裕子さんのやさしい人柄に魅了されるお客さんも多いそうです。

明るい笑顔が素敵な宮本裕子さん。みんなのお母さんといった雰囲気です

最後に、「日本遺産・人吉・球磨」の構成文化財の一つに数えられる「王宮(おうぐう)神社」は、多良木町の鎮守として相良氏が守り続けた神社です。中でも上相良氏の相良頼久が1416(応永23)年に建立したとされる楼門は、室町時代の様式を今に伝える熊本県内最古の唐様の楼門で、県の重要文化財にも指定されています。楼門に入って左右に立つ仁王像は心なしか表情が穏やかで、親しみを感じます。

寄棟造りのかやぶき屋根で、細部には唐様と呼ばれる意匠が見られる王宮神社楼門

楼門の内部に立つ仁王像

百太郎公園

球磨郡多良木町多良木1274

TEL.0966-42-2075

(百太郎溝土地改良区)

ゆうがの杜

球磨郡多良木町久米2048-1

TEL.0966-42-5223

料/1泊2食付き6500円(1泊朝食付き5000円)

※塩ラーメンは月曜、水曜、金曜のみ営業(11時半〜13時半)
※居酒屋は予約制

王宮神社

球磨郡多良木町黒肥地1169-4

TEL.0966-42-1257

(多良木町企画観光課商工観光係)


旅のおみやげ 多良木町 多良木えびす物産館で見つけた「猪鹿鶏(いのしかちょう)ハム&ソーセージ」

多良木駅前にある物産館で見つけたのはイノシシ、シカ、鶏の3種の合びき肉を練り込んだ特製ハムとソーセージ。ユニークな名前もさることながら、味も◎。悠久石を模した饅頭は、一般的な饅頭の倍以上の大きさ。黒砂糖入りの生地と、ユズの果皮を練り込んだ白小豆あんの豊かな風味が特徴で、お土産としてインパクト大です。

左から猪鹿鶏ハム(550円)、猪鹿鶏フランク(550円)。かむほどにうま味が広がり、球磨焼酎のお供にぴったりです

下槻木の悠久石饅頭(230円)。柚子の香りが爽やか

多良木えびす物産館

球磨郡多良木町多良木1534-4

TEL.0966-42-1109

営/9時~18時(4~9月は8時~18時半)

休/第2・4火曜


旅の終わりに・・・

夕刻の風は冷たいけれど、夕日を映した川の流れは暖かい色に輝いています。一日を振り返ると、出会った皆さんはいずれも穏やかで心温かく、胸に優しい思い出が残りました。過ぎゆく秋の多良木町で、ほっと心がほどけていったのでした。


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