一年を通じて水温14度を保つ「寒川水源」。1日約3000トンもの湧水量を誇ります

初夏の日差しが降り注ぐ不知火海は、キラキラと輝いています。水俣川から、支流の久木野川、寒川川へと車を走らせること約20分。大関山(標高902m)の中腹にある「寒川水源」にたどり着きました。

木漏れ日が揺れる雑木林の奥に岩清水が湧き出し、足元の岩はコケで覆われています。これから、涼を求めて、名物のそうめん流しなどを楽しみに訪れる多くの人でにぎわいます。

水源の美しい水が流れ込む「寒川の棚田」は、「日本の棚田百選」に選ばれた景勝地。あぜに咲く紫の花に見とれていると、「これは大根の花よ」と声を掛けてくれたのは、この地区に住む寒川つるこさん(80)です。ちなみに地区の人たちの名字のほとんどが「寒川」で、皆さんは名字ではなく名前で呼び合っているそうです。

あぜ道で出会った寒川つるこさん。「帰りに車の中で食べて行って」と不知火柑を持たせてくれました

山の斜面を切り開き、石を積み上げてつくられた「寒川の棚田」。およそ30ヘクタールに700枚の水田が広がっています

「これは大根の花。根っこを食べる大根とは違うけど、この辺ではそう呼ぶの」とつるこさんが教えてくれました

つるこさんは季節に合わせて米や野菜を育てており、5月の下旬には田植えが控えています。「田植えは大仕事だけれど、孫やひ孫たちみんなで手伝いにきてくれるとよ。だけんおいしいご飯を作って待っとると。今から楽しみたいねぇ」と顔をほころばせます。秋の収穫の頃もにぎやかだそうで、棚田が家族の絆をつないでいるようです。

寒川の棚田の保全や環境教育、加工品の製造・販売など、多彩な活動を続けている「久木野ふるさとセンター愛林館」を訪れました。

「久木野ふるさとセンター愛林館」は、水俣市と鹿児島県姶良郡をつないでいた旧JR山野線の「久木野駅」跡地にあります

「水俣=海という印象が強いでしょうが、豊かな海を保つには、山の棚田や森による水源育成機能の維持が不可欠。森や棚田の保全活動を通じて“長続きする地域”をつくることが、私たちの役割です」と話すのは、館長の沢畑 亨さん(57)です。

合志市(旧西合志町)で育った館長の沢畑 亨さん。今ではすっかり水俣の人です

沢畑さんは、“耕作断念地”の草を刈る「働く田助手(たすけて)」や、棚田米を買って応援する「食べる田助手」、自然と田んぼと食卓のつながりを学ぶ「棚田食育士」などの企画を編み出し、都市住民と里山の交流を育み続けてきました。

水俣の干しタケノコを使った「タイカレー」(550円)をはじめ、「香り米」(334円〜)やにんにくとこうじ入りの「柚子ごしょう」(795円)など食卓に取り入れやすい加工品がずらり。3種のカレー(タイ、インド、和風)は店内でも味わえます

「香り米」をいつものお米に混ぜて炊くと、ポップコーンのような香ばしい香りとモチっとした食感が楽しめます。冷めてもおいしいのでおむすびやお弁当にもおすすめ

5月18日には、愛林館近くの水を張った棚田を2000本の竹のたいまつで照らす「棚田のあかり」が行われます(見学料500円)=資料写真

寒川水源亭(4月28日~9月まで流しそうめんの営業)

水俣市久木野寒川水源

TEL.0966-69-0776

営/10時~19時(5~6月の平日は~18時)

休/期間中は休みなし

久木野ふるさとセンター愛林館

水俣市久木野1071

TEL.0966-69-0485

営/9時~17時

休/月曜(祝日の場合は翌日休)

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