番茶の香ばしさで何個でも食べることができそうなお茶ご飯のおにぎり

松島町教良木(きょうらぎ)地区の食の名人が立花匡子さん(89)。立花さんはその日、仏事に出す「お茶ご飯(茶飯)」を作っていました。

「みんなから頼られるのが元気のもと」と言う立花さん。注文と同時に黒ニンニクを手渡してくれるご近所さんもいると笑います

お茶ご飯は煮出した番茶で炊いたご飯で、この土地の郷土料理だそうです。ふっくらと炊き上がったご飯の香りのいいこと。「おにぎりにして食べてごらん」とすすめられ、作業に忙しい立花さんの隣で、遠慮なくおにぎりを作って頬張ります。番茶の香ばしさがご飯の甘味を引き立て、立花さんお手製の大根の味噌漬けが出されると、手が止まりません。

「くまもとふるさと食の名人」にも選ばれている立花さんは、1998(平成10)年に上天草の郷土料理を手掛ける「あまづら会」を立ち上げました。手作り弁当や加工品を地域のイベントなどに出品するほか、地区の人から注文を受けて、祝い事や仏事などの料理も作っています。

いきなり団子のあんこも自家製。イベントに出品する時は、数日前から少しずつ準備します

「大根をもらったから切り干し大根にします」と立花さん。食材は近所の方からのおすそ分けも多いそう

鮮やかなオレンジ色のキンカンのシロップ煮。これもご近所さんが作ったキンカンです

「少しでも地域の役に立ちたいから」と言う立花さんですが、実は、もう一つの顔があります。なんと、現役の美容師。加工所のある自宅の一角で美容室を開いています。

戦後まもなく、東京に住むいとこの出産の手伝いで上京した立花さんでしたが、情報量の多い都会で開眼。美容師として自立しようと決意しました。そして、美容界の先駆者・山野愛子の美容学校に入学し、卒業後は神奈川の美容室に住み込みで勤務したそうです。

数年後、立花さんは天草に戻ります。きっかけは「台風で利根川が決壊してね。『危なかけん、帰ってこい』と親に言われて。利根川の決壊が原因というより、『親元で暮らせ』と言いたかったんだと思うけどね」と振り返ります。生涯独身を貫き、自分の手で人生を切り開いてきたという、そんな大先輩の姿に学ぶことは多くあります。

教良木地区にある「金性寺」では、立花さんや地域の人たちで作る精進料理を食べることができます(要予約)。

きれいに掃き清められた「金性寺」の境内。兵庫県出身で20年前から住職を務める田中省吾さん(49)は、「教良木は静かな山里ですが、人情味にあふれています」と話します

「金性寺」は1642(寛永19)年に、天草の初代代官だった鈴木重成が三代将軍家光の命を受けて開いた曹洞宗のお寺です。江戸末期には境内から裏山にかけて「天草新四国八十八カ所霊場」が開設されました。霊場は全長約1.4km。心静かに、里山の芽吹きを感じながらめぐってみるのもいいものです。

山門にたたずむお地蔵様。ここから「天草新四国八十八カ所霊場」がスタートします

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