「長部田海床路」。潮が満ちると道路は海に沈み、電柱が海面から突き出るように並びます。日が暮れると海面でゆらゆらゆれる電柱の明かりが幻想的です

JR三角線と並走する国道57号。住吉駅前を過ぎ、有明海を望む海岸沿いへと景色が変わると、潮の香りが漂ってきます。冬の有明海の風物詩が、海面に整然と並ぶノリ養殖の「ノリひび」の支柱です。

宇土市では住吉から網田(おうだ)にかけての沿岸でノリ養殖が盛んに行われ、今年も10月下旬から種付けがスタート。取材に訪れた日は、沖合にある浮き流しに網を張る作業が行われており、ノリ養殖の工程で一番忙しい一日なのだそうです。

ノリひびの支柱にはかつては竹が使われていましたが、近年はFRP(繊維強化プラスチック)製も使用されています

そこで、住吉町にある「長部田海床路(ながべたかいしょうろ)」を歩いてみました(徒歩のみ可。繁忙期は作業の邪魔にならぬよう注意)。沖に向かう海床路は、ノリ養殖や漁業関係者が引き潮の際に船を着けるために設けられ、1973(昭和48)年に完成。海の中に立ち並ぶ電柱は、熊本地震と台風の影響で倒壊していましたが、今年6月に復旧しました。

ノリ養殖を営む益田孝二さん(61)、いつ代さん(60)夫婦が「沖での作業は潮の満ち引きの時間との勝負だけん」と急ぎ足で船に向かいます。歩きながら作業の大変さを教えてくれ、「あれんじ、いつも読んでますよ! そうそう、海は満ち始めると速いけん、気をつけて戻ってね」といつ代さんが、優しい笑顔を残して船に乗り込みました。

ノリ養殖歴35年とベテランの益田孝二さん・いつ代さん夫婦

浮き流しの網を固定させるいかりを積み込むために、海床路に船を着けたのは坂田裕和さん(25)です。「5年前に家業のノリ養殖を手伝いはじめ、今年1月に父が亡くなってからは自分が大黒柱。今年の種付けはうまくできたので一安心です」とホッとした笑顔を見せ「ノリひびの近くまで行ってみますか?」と忙しい作業中、取材班のために船を出してくれたのでした。感謝。

「初日丸」を操縦する坂田裕和さん。住吉漁協では彼のような多くの若手もがんばっています

坂田裕和さん(右)が運んでいた浮き流し用のいかり。左は、幼なじみで手伝いに来ていた冨武敬済さん(25)

益田さん夫婦や坂田さんらが所属する「住吉漁協」では、手すき、天日干しといった昔ながらの技法の伝承にも力を注いでいます。

住吉漁業協同組合・長部田海床路

宇土市住吉町875

TEL.0964-24-3205

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