華やかなひな飾りをめでながらひな祭りのごちそうを囲むひとときは、心が晴れる気がします。今年はゆっくりと、家族で桃の節句を楽しんでみてはいかがでしょう。

あれんじの「味暦」でもおなじみの、熊本市中央区新町にある「日本料理おく村」の奥村賢さん(50)に、見た目も愛らしい節句料理を教えてもらいました。

「楽しいひな祭りになりますように」と料理を教えてくれた奥村賢さん


対のひな卵

お子さんと一緒に作ると楽しい「ひな卵」。卵で作るひな飾りです。緑と赤の食用紅を別々の鍋に10ccとお酒を少し加えて弱火で温め、ゆで卵に絡めて色を付けます。また、水前寺菜をボイルしてしばらく置き、色出しした液や梅酢でもいいそうです。

次に色を付けた卵の頭にV字形の切れ目を入れて取り出します。取り出した頭の部分を色違いの胴体に盛り付けます。卵の底辺も座りが安定するように垂直に切ります。

緑色の卵が男びなで、のりを着物に見立てます。桃色の女びなの卵には錦糸卵をまとわせます。仕上げに三つ葉の茎で結んで並べると、愛らしいひな人形ができました。


ハマグリのしんじょうの吸い物

節句料理に欠かせないのがハマグリです。ハマグリの貝殻は対のものとしか合わないことから、伴侶と末永く暮らす、良き夫婦の象徴とされてきました。

まず、鍋に水とハマグリを入れ、落としぶたの代わりに昆布を入れ中火でひと炊きします。かつおだしで少しのばすと風味が増すそうです。味付けは塩少々に、薄口しょうゆを数滴落としてつゆを作ります。

だしが出たハマグリの身を貝殻から外し2つに分けます。ハモのすり身にキクラゲを加えて貝殻に詰め、ハマグリを乗せて蒸し、しんじょうを作ります。また、片方のすり身に食用紅を少し落として仕上げると、紅白のしんじょうが出来上がります。

器にハマグリのしんじょうと姫菜、ユズを加え、つゆを注いで出来上がり。


菓子器に盛る、プチちらし寿司

ちらし寿司はハレの日に欠かせない料理。長寿を願うエビ、縁起物のタイに加えてマグロやカンパチなども盛り付けます。

酢飯にごまを加えると香ばしく、一面の菜の花に見立てた錦糸卵が春の野を描きます。錦糸卵は焼いて粗熱が取れてから細切りにするときれいに仕上がるそうです。キュウリの飾り切りやプチトマト、三つ葉結びを添えると彩りが美しくなります。

ちらし寿司は豪華に大鉢に盛って出すのもいいものですが、例えば漆器の菓子器に一人分ずつ盛り付けると、それぞれの気分も盛り上がりそうです。

日本料理 おく村

熊本市中央区新町1-1-8

TEL.096-352-8101

営/11時半〜13時、17時〜22時

休/不定


最後に

取材で訪れた小寺由美子さんのお店では、愛らしい赤ちゃんを抱いた若いご夫婦の姿を見かけました。子どもの健やかな成長を願う人の心は、昔も今も変わりません。

今年に入って、92歳になられるご婦人が来店され「私のひな人形は戦時中、お米に変わってしまってね。だからもう一度、ひな人形を飾りたくて」と言って人形を買い求めていかれたそうです。

この原稿が一息ついたところで、自宅の物置に眠っていたひな人形を引っ張り出しました。うっかり忘れるところで、人形に「ごめんごめん」と謝りながら和室に飾り、人形の穏やかな表情を眺めていると、次第に優しい気持ちになっていくのでした。


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