こぢんまりとした店内には、店主の田尻さんがセレクトした書籍が整然と並べられています

柔らかい光が こぼれる 小さな書店

古いたたずまいのビルの2階。「橙書店」のガラスの扉からオレンジ色の柔らかい光がこぼれてきます。扉の鈴をカランと鳴らすと、その奥には天井まで届く本棚に数々の本が並ぶ世界が広がります。

古いビルの階段を上った2階にある「橙書店」のドア。

カフェが併設されており、キッチンからおいしい香りが漂ってきます

開業して18年になるという橙書店。かつては熊本市中央区の新市街にある通称「玉屋通り」に店を構えていましたが、熊本地震後、練兵町に移転しました。以前の店もすてきな雰囲気でしたが、現在の店も居心地のいい空間が出迎えてくれます。

古い材でしつらえられた本棚。その近くにソファや椅子が置いてあり、本をゆっくり探せるようにという心配りがうかがえます。さりげなく置かれた雑貨や、カフェから流れてくるおいしそうな香りも、緊張感をほぐしてくれるアクセントです。

購入した本を、テーブル席でドリンクを飲みながら読むこともできます。

小さな棚やテーブルにも本が置かれています

カウンター席では、常連客が田尻さんと談笑する姿も

器も販売されています

田尻さんが執筆したエッセー集。右「猫はしっぽでしゃべる」(ナナロク社/1512円)、左「みぎわに立って」(里山社/2052円)。


店主がすすめる 韓国の女性作家の一冊

「橙書店」がそろえている書籍は、店主の田尻久子さん(50)がジャンルを問わずにセレクトしたものばかり。幼いころから本に親しみ、「私にとって読書は、食事をするのに近いものなんです」という田尻さんは、自然体で柔らかい雰囲気を醸し出しています。

そんな彼女の感性で選ばれた本の中から手にしてみたのは、韓国の女性作家、ハン・ガンが書いた「すべての、白いものたちの」(河出書房新社・斎藤真理子訳)。「小説のようであり、詩のようでもあり。人間の心の悲しみや苦しみ、希望が描かれていて、お隣の国の人と私たちとの間に何の隔たりもないことが分かります」と田尻さんが教えてくれました。

橙書店 BOOK

「すべての、白いものたちの」
(ハン・ガン著/河出書房社)
2160円
生まれてまもなく亡くなった赤ん坊(作家の姉)を包んだ産着はそのまま白装束となった…。本書にはさまざまな白いものが登場し、詩のような断片的な文章の中に、死者を悼む挿話が組み込まれています。ページごとに異なる白の紙質の装丁もすてきです

「セントラル劇場で見た1本の映画」
(福原悠介・村田怜央/企画・編集/ペトラ)
2160円
2018年に閉館した宮城県仙台市の映画館「セントラル劇場」に通った人たちによるエッセーと、約40年間の上映作品を紹介

「戦中・戦後の暮らしの記録」
(暮らしの手帖社)
2700円
戦中・戦後を生き抜いた人たちから「暮らしの手帖社」へ寄せられた手記、手紙、絵、写真など157の体験を収録した一冊

橙書店

熊本市中央区練兵町54 松田ビル2F

TEL.096-355-1276

営/11時半~20時(日曜~17時)

休/火曜

P/なし

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各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。