茶席に欠かせないのがお菓子。濃茶では上生菓子、薄茶では干菓子が出されますが、そのお菓子にも、客を招く側の亭主の思いが込もります。

熊本市南区川尻の「菓匠たてやま」の立山学さん(67)は、熊本の茶人たちのお菓子を長年作り続けてきた一人です。「茶席のお菓子を作るとき、まず、亭主の方にテーマをうかがいます。掛け軸、生け花、茶碗などの道具によっても、お作りするお菓子は変わってきます」と立山さんは話します。

「甘いお菓子に似合わん、ごつか顔ですみません」と笑う、「菓匠たてやま」の立山学さん

「甘いお菓子に似合わん、ごつか顔ですみません」と笑う、「菓匠たてやま」の立山学さん

茶席のお菓子は、花や景色を表現した季節感のあるものや、縁起物などいろいろです。「京都や東京、金沢などは、お菓子の『見立て』が抽象的だったりします。熊本の茶席でもそういったものをリクエストされる場合もありますが、若いお客様のために、見た目に分かりやすいお菓子を選ばれることもあります」

立山さんの工房で手仕事を拝見しました。まず、濃い桃色のあんをひとつまみし、次に白あんを練り込むと淡い桃色の皮ができました。今度は小さくまるめた白あんを桃色の皮で包み、断面が三角形の棒の道具を使って5カ所に割り込みを入れます。割り込みを入れた中心部から、道具の突起部分を利用してクイクイと押し出していくと、桜の花びらが完成。立山さんの手のひらに、はかなげな美しさが咲きました。

「茶席の主役は招かれたお客さま。お菓子はお茶の脇役です」という立山さん。茶席を支える菓子職人の心意気を見た気がしました。

菓匠たてやま

熊本市南区川尻4-1-43

TEL.096-357-9356

営/9時~19時(日・祝日~18時)

休/不定


主菓子

濃茶といただくのが主菓子。花や野菜、景色など季節感のある上生菓子が用いられます。

春に顔を出すタケノコを表現した愛らしい形の上生菓子。口直しに塩昆布が添えられています

春に顔を出すタケノコを表現した愛らしい形の上生菓子。口直しに塩昆布が添えられています

肥後古流的々社」の茶席でおなじみの「亀甲」。ゆで卵の黄味で作ったあんの中にはこしあんが入っています

肥後古流的々社」の茶席でおなじみの「亀甲」。ゆで卵の黄味で作ったあんの中にはこしあんが入っています

茶室に飾られたコチョウワビスケと重ねて、ツバキを表現。上に伸びた葉が、命の輝きを伝えています

茶室に飾られたコチョウワビスケと重ねて、ツバキを表現。上に伸びた葉が、命の輝きを伝えています

サクラの花に見立てた上生菓子。淡い桃色と白あんの色合いが美しいお菓子です

サクラの花に見立てた上生菓子。淡い桃色と白あんの色合いが美しいお菓子です


干菓子

薄茶の席で出されるのが干菓子です。固くて口溶けのいいものや半生干菓子までいろいろあります。

常磐(ときわ)の松と、春のツクシ。口に小さく入る大きさに割っていただきます。干菓子は2種類を組み合わせても

常磐(ときわ)の松と、春のツクシ。口に小さく入る大きさに割っていただきます。干菓子は2種類を組み合わせても

市松模様と、右はサクラに見立てた桃色と白の丸い半生干菓子。箸で懐紙に取っていただきます

市松模様と、右はサクラに見立てた桃色と白の丸い半生干菓子。箸で懐紙に取っていただきます


茶の湯に触れて

田島さんの茶室を後にすると、春の空がいつもより美しい色に映りました。家々の垣根の向こうに咲いたウメの可憐(かれん)さや、日差しの柔らかさなど、普段は感じ取れないものを肌が吸収していくようで、「心が洗われる」とはこういう感覚をいうのでしょうか。

年を重ねた今、一切の無駄がなく、凜(りん)とした美しさが少しは理解できるようになった気がして、あらためて習い事を始めてみたくなりました。


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